2009年度公募プログラム
塾医学部学生の海外ワークショップ派遣と学生による学内ワークショップ開催-海外での成果を如何に慶應に還元するか
担当
漢方医学センター 准教授 渡辺 賢治
目的、背景

慶應義塾大学医学部では2004年より医学教育統轄センターを新設し医学教育改革に取り組んでいる。医学教育の今後の展開として国際対応を考えること、国際的に活躍することのできる学生を輩出することは共に極めて重要な課題である。医学教育は急速に国際化が求められてきており、この中で医学生の英語による医学教育の必要性が高まっている。そのような中で行われているのがハワイ大学における当プログラムであり、年2回、春・夏に1-2週間に渡って施行されていて、毎年慶應からは4名ずつ、計8名が参加している。
ハワイ大学に本塾医学部の学生を派遣する目的は二つある。一つは、アメリカの教育を受け、英語を用いて医療現場で活躍できる学生を早期に育てること、二つ目は、慶應以外からの医学生も参加する本ワークショップにおいて、日本中から集まったモチベーションの高い学生と切磋琢磨できることである。
内容、成果
2009年3月16~24日行われたハワイ大学での春のワークショッププログラムではPBL(Problem Based Learning)、CRE(Clinical Reasoning Exercise)、SP(Simulated Patient)といった症例をベースに自ら考え、行動するといった教員や模擬患者との双方向のやり取りから学ぶスタイルの授業が行われた。ハワイ大学にはこれを可能にするために教員にはコーディネーターとなるためのコースが、診察の練習には病院の診察室と同じ部屋が用意されていた。約10日間ではあったがこのような恵まれた環境で学べたことは参加者にとって大きな収穫であった。一つには自らが考え、疑問を持ち、解決するという実際の臨床の現場で医師が行っている思考の過程を模擬的に体験できた点。二つ目には病気ではなく患者を診るという意識を持てる授業であった点。そして、志を同じくする日本中の医学生とともに学ぶ機会を持てたことも大きな意味があった。
2009年8月16~21日にハワイ大学医学部にて行われた夏のPBLのワークショッププログラムでは春とはまた異なった形でPBLが中心となったプログラムであった。一般にPBLとは、学習者自身が中心となり、反省的反復の作業を伴いながら実践される少人数グループの教育手法であるが、こと医学教育においては、患者の症状に基づき原因疾患を探るプロセスによって医学を学ぶという位置づけを持つ。今回はそれに加え、一切の発表やディスカッション等を英語で行うことにより、医学英語に対する啓蒙を促進する意味でも重要なプログラムであった。プログラム前半ではPBLの基礎事項となる内容について確認した上で、後半にかけては小グループに分かれ、実際にPBLを用いた実践プログラムを進めると共に、患者の病状と病態、原因疾患を結び付けるcase mappingのトレーニングを行った。
今回のワークショップから、ただ単にPBLの取得・他大学の学生との国際交流を行えたというだけではなく、慶應医学部へPBLの手法を還元し、後輩たちへ医学英語教育及び医学を通じての国際体験を伝えることができたことは極めて有意義であり、医学という枠組みを超えて今後の慶應義塾発展のためには欠かせない第一歩となるであろう。