2019年度公募プログラム
[アート・センター]
ミーツ・アーティスト・イン・慶應:学生がアーティストに出会うワークショップ
活動代表者
アート・センター教授 渡部葉子
ワークショップを通じて、慶應義塾の学生や生徒が、国際的な文脈で展開する現代アーティストに出会い、同時代への広い視野、歴史への深い洞察、そして創造的なマインドを培う機会を創出します。

「奥村雄樹 彼方の男、儚い資料体」(会期:11月11日-11月22日)
オランダ・ベルギーを拠点に国際的に活動するアーティスト奥村雄樹氏を講師に迎え、ワークショップを実施した(計4回)。参加学生5名は今回の展示の主要作品である映像作品《彼方の男》(2019)を予め鑑賞した上で奥村氏との対話を行った。対話に際しては学生自らが問いを立てることを重視し、作品をめぐる様々な問題についてアーティストとともに思考した。この対話には「美術史特殊ⅡJ」の受講学生8名も加わった。さらに学生は展覧会関連イベントとして開催されたアーティストと有識者によるディスカッション(登壇者:奥村氏、南雄介氏(愛知県美術館館長)、渡部、久保)に参加し、奥村氏の作品及び現代美術の潮流の一つであるコンセプチュアル・アートへの知見を深めた。一連のアーティストとの関わりの後、アート・センターのスタッフとのフォローアップ・ディスカッションの機会を設け、体験のフィードバックを行うとともに、学生はレポートの作成に取り組んだ。
アート・アーカイヴ資料展ⅩⅨ「中嶋興―MY LIFE」(会期:9月9日-11月1日)
ビデオアーティスト中嶋興氏の展覧会に際して、学生と中嶋氏との出会いの場を設定した。中嶋氏の家族を対象とした《MY LIFE》は、制作開始からおよそ50年経った今もなお進行中の作品である。「芸術の現在Ⅱ」(文学部設置科目)では、学生はまず予備知識一切なく同展を鑑賞し、講義後、改めてもう一度鑑賞し、二回の鑑賞経験の落差を元に鑑賞レポートを作成した。さらに展示室では中嶋氏が学生からの質問に応じた。また「アート・アーカイヴ特殊講義演習」(アート・センター設置講座)では、2名の学生が展示を熟覧し、中嶋氏と2回のディスカッションを元に各自の「MYLIFE」を映像作品として制作し、それを中嶋氏が講評するワークショップを実施した(計3回)。
成果
学生とアーティストとの出会いを一過性のイベントとして終えるのではなく、学生とアーティスト、スタッフとの丁寧な関わり合いの中で行うことで、対話によるインターラクティヴな学びの機会を創出することができた。ワークショップは、アーティストとの対話と交流を通して、自由に思考すること、他者の多様な観方、考え方に触れ、改めて自分自身について考えるアクティヴ・ラーニングの場として機能した。大学という学びの場に、学生とアーティストとの出会いが持ち込まれたからこそ実現できたワークショップであり、アート・スペースを擁する本学ならではの特性を活かした活動であったと言える。さらに記録集『ミーツ・アーティスト・イン・慶應:学生がアーティストに出会うワークショップ2019 プロジェクト・レポート』を発行し、学生のレポート、アーティストの言葉・文章を所収することで、活動の記録・共有・発信を実現した。この記録集は単なる活動の報告にとどまらず、国際的なアーティストに関わる活動の発信として、現代芸術研究に資するものである。