2019年度公募プログラム
[先端生命科学研究所]
慶應鶴岡タウンキャンパスと鶴岡市サイエンスパークで体験する最先端の地域エコシステム
活動代表者
先端生命科学研究所長 冨田勝
慶應義塾が鶴岡市とともに作り上げたサイエンスパークには、「人工クモ糸の生産」や「唾液によるがん診断」等、多数の画期的な技術があります。参加者の皆さんにはキャンパスの垣根を超えて、日本の地方が持つ潜在力を体験して頂きたいと思います。

本企画では、鶴岡のサイエンスパークに形成されつつある地域エコシステムの一部を見学・体験し、楽しみながら、交流を深め、情報交換を行った。本企画に運営者側として参加したのは、主に基礎研究と教育を担うIAB, 技術の商業化を推進するSpiber社、そして、地域の強みを生かした交流の場を提供したYAMAGATA DESIGN社である。本来の参加者は小中学生27名だが、小中の教員(特に若手)の方々にも鶴岡およびサイエンスパークを理解して頂き、生徒へのポジティブなフィードバックを期待すべく、引率業務は全て運営側が引き受けるという条件で11名を招待した。
IABでは分析機器や次世代シーケンサー等、最先端機器の見学を行った。特にIABで開発した分析機器CE-MSは癌化のメカニズムの解明など、基礎研究のための重要なツールとなっているだけでなく、地元で収穫されるコメやカブ等の多数の食品の品質向上に役立っていることを説明するとともに、CE-MSを使用した鶴岡市民の血液、尿を使用した健康調査等、IABの研究と地域との関わりを十分に強調した。
Spiber社では、同社取締役によるプレゼンテーションで同社の紹介を行い、IABや地域と結びついて、いかに画期的な商品(人工クモ糸等)を開発することに成功したかをアピールした。社内見学では、国際色豊かなチームの熱気を味わって頂くとともに、最先端の実験機器や実際に繊維を作るための大掛かりな装置を見て頂いた。
YAMAGATA DESIGN社は、国指定史跡である藩校致道館にて、江戸時代から伝わる武士の学問「論語」の学習を企画した。また、サイエンスパーク内に立地するキッズパーク「KIDS DOME SORAI」て、木工キーホルダーの制作等を行った。夜は同社ホテルスイデンテラスにて懇親食事会を開催し、その後同社の宿泊施設に泊まって頂いた。
最終日の閉講式では、各校から1人ずつ感想を述べて頂き、全員に感想を記入して頂いた。反応はとても良好で、帰り際にその場にいた約10名の参加者が、「来年も参加したい」と実行委員長の周りに集まってくるほどだった。小中の教員の方々からの反応も良好で、来年もぜひ開催して欲しいという要望が相次いだ。
本企画の大きな目標は、多様な価値観を持ち、また多様な価値観を受け入れられる人材が育つきっかけを作ることであった。そのために用意する題材が「地方の持つ潜在力」であるが、長期的な効果を出すために重要なのは、2泊3日の間にそれを強烈に印象付けることであった。そこで、鶴岡市のサイエンスパークでエコシステムとして発展しつつある、IAB、同市で生まれた日本を代表する科学技術系ベンチャー企業Spiber社および、地元の素材をフルに生かした活動を行うベンチャー企業YAMAGATA DESIGN社を参加者に「見て」「体験」して頂いたことには大きな効果があった。日程の途中に、羽黒山で山伏修行体験を入れ、本地域の印象付け効果を狙った。IABやSpiber社には、本塾一貫教育校出身者が所員または学生として多数在籍してサイエンスパークを牽引しており、参加者に大きな親近感と感動を与えられたと考えている。