2010年度公募プログラム
ヨーロッパ諸大学短期留学型研修プログラム
活動代表者
総合政策学部教授 古石 篤子
本プログラムはドイツ語、フランス語を駆使し、ヨーロッパをフィールドとした特定専門領域においての問題発見・解決を志向できる学生の育成を目的とします。学部間の垣根を越え、全塾一体となって、近未来の日本に求められるヨーロッパに強い人材の輩出を目指します。

3年目となった今年度は、2年目に引き続き、慶應義塾の各学部、大学院で学生を募集した。その結果、フランス語関連では、昨年度と同じく8名を選抜した。所属は、環境情報学部4名(2年生1名、3年生2名、4年生1名)、総合政策学部1名(3年生)、法学部2名(2年生)、理工学部1名(1年生)であった。研究テーマは、生物多様性、児童文学、SNS利用状況、女性のライフワーク、子育て事情、アニマトゥールと余暇、移民問題、文化的マイノリティとケルト文化と多岐にわたるものであった。
一方、ドイツ語関連でも、昨年度に続いて今年度も10名9組を派遣した。所属は理工学研究科1名、法学部3名、文学部1名、総合政策学部3組4名、環境情報学部1名と、1研究科、4学部となった。また研究テーマも、環境政策・意識、観光政策、外国語学習・習得、シュタイナー教育、法曹養成制度と多岐にわたっている。
フランス語関連、ドイツ語関連いずれも、フィールドワークをするために現地に足を運ぶことで、初めて実態を具体的に把握することが可能となるテーマである。と同時に、現地で調査をして事足れりというものではない。このフィールドワークがきちんとした研究の礎となるために、事前の準備、また帰国後の研究の推進のための総括も含んだトータルなプログラムを構築してもらった。
具体的には、まず事前発表会で研究計画を発表する。ここで複数の教員から、研究の内容、現地でのフィールドワークの内容についてアドバイスを受ける。それに基づいて学生は、出発までにさらに研究計画を吟味し、具体化する。
現地では、フランスはパリ・ディドロ大学、ドイツはハレ大学などの日本語学科の学生がTA(ティーチング・アシスタント)としてインタビューのサポートなどをした。それは、現地の学生とも交流を深め、さらに、帰国後もお互いに交流を続けてゆくきっかけともなった。
帰国後は、成果発表会を行い、研究の成果をパワーポイントにまとめ報告をするとともに、複数の教員からコメントをえたうえで、レポートという形でフィールドワークの詳細をまとめた。
今回3年間にわたって実施されたプログラムは、次の意味でこれからの新しい研修スタイルのモデルを形成しえたと考えられる。このプログラムは海外で行われるとしても、単なる語学研修ではない。むしろ外国語能力を駆使し、自らが研究を遂行してゆくことに目的がある。さらにインタビュー、アンケートなどを通して、実際に現地の人々と接触し、そこから演繹的に研究を推進してゆくところに特色がある。このような外国語能力+研究というひとつのモデルを、学部のレベルから学生が実践してゆくことにこのプログラムの意義がある。
最後にフランス語8名、ドイツ語10名の研究テーマを挙げておく。1)フランス児童文学と出版事情 2)フランスにおける生物多様性、 3)フランスにおけるSNSの使用実態、 4) アニマトゥールと余暇 5) 文化的マイノリティとケルト文化の復興、6)働く女性のライフワーク 7) フランス人女性の仕事と子育ての両立、8)共和国と移民問題。
1)ドイツにおける法曹養成システムと弁護士像 2) チューリンゲン州の教育制度における外国語学習 3) ドイツ語圏海外研修におけるドイツ語接触場面研究4) ドイツ人の第二、第三言語習得に対する動機、意識調査、及び英語以外の第二言語の重要性について 5) Halle周辺の環境意識の実態研究調査~Sachsen Anhalt の環境対策の成功事例~ 6)「開かれた」学校教育の事例調査〜シュタイナー教育における日独比較と、森の幼稚園・環境教育バスの視察を通して〜 7)ドイツ、森の幼稚園から学ぶ環境教育の展開 8) Umweltzoneから見るドイツのSortierungの精神 9) ドイツ環境政策の日本の地方開発への導入 10)ドイツの観光施策-特に観光資源の開発について