2008年度公募プログラム
延世大学・香港大学・慶應義塾大学3大学合同東アジア研究プログラム
(Three-Campus Comparative East Asian Studies Program)奨学制度

活動課題(テーマ)
本プログラムは、延世大学Underwood International College、香港大学社会科学部、慶應義塾大学国際センターの共同による新しい形式の学生交換プログラムで、各大学から選抜された合計18名程度の学生がともに1年間をかけて3大学を巡り、共通の講義を受講するものである。この取り組みを通じて、東アジア地域に関する深い理解を有する人材を輩出することを目的としている。
韓国・中国など東アジア地域への留学に対する塾生の関心は欧米地域への留学と比較すると低く、交換留学への志望者も少ない。このプログラムを未来先導基金の後押しにより奨励することで、塾生に東アジア地域への関心を抱かせるとともに、将来の優秀な応募者の確保が期待される。
本年度については、すでに選考を終えた参加塾生4名および、延世大学・香港大学から受入れる学生12名、計16名の学生にプログラム参加奨励費として一人20万円を付与する。
担当
国際センター所長 小尾 晋之介
参加3大学からの代表学生16名が3つのキャンパスを1年間かけて巡り、東アジアについて学ぶ全く新しいタイプの国際交流プログラムです。世界的にも関心が高まっているこの地域の未来を導く若い世代の活力に期待します。
主な活動メンバー
国際センター所長 小尾晋之介
法学部教授 添谷芳秀
法学部専任講師 礒崎敦仁
国際センター課長 屋部 史
国際センター日吉支部係主任 鈴木民香
国際センター 長川 愛
事務担当部門
国際センター
このプログラムは、香港大学社会科学部、延世大学Underwood International College、慶應義塾大学国際センターの共同による新しい形式の学生交換プログラムで、各大学から選抜された学生がともに日本、香港、韓国にあるそれぞれの大学に一緒に留学をし、共通の講義の受講、共同の寮生活などを通じて、東アジア地域に関する深い理解を有する人材を輩出することを目的としている。2008 年度は香港大学、延世大学からはそれぞれ6 名、慶應からは4 名の学部学生が参加している。
留学生の来日時には、慶應からの参加学生によるソーシャルプログラムが企画された。また、秋学期の授業開始にあたっては、香港大学Faculty of Social Sciences 学部長のIan Holliday 教授、延世大学Underwood International College 学部長のJung-Hoon が来日され、慶應義塾大学からはプログラムコーディネーター添谷芳秀教授が参加して、プログラム全体についてのガイダンスが行なわれた。その後、慶應での必修科目となる”Special Study of International Relations in the East Asia II”の第1 回授業がこれらの3 名の教員によりオムニバス形式で行なわれた。同日夕方にはプログラムのオープニング記念式および未来先導基金による奨学金の授与式が三田キャンパス東館大会議室で開催された。これには、坂本達哉国際連携担当常任理事、工藤教和創立150 年記念事業担当常任理事、塾内関係教員のほか、延世大学学務担当副学長Dr. Shin, Myungsoon、香港経済貿易代表所代表Mrs. ChokJennie も出席され、3 大学からの代表学生に奨学金授与証が手渡された。
慶應での学習期間は、前述の必修科目のほか、国際センターが設置する日本研究講座・国際研究講座から本プログラムに協力を得られた教員が担当する科目群および留学生については日本語・日本文化教育センターが設置する別科・日本語研修課程の技能科目から7 科目以上を選択して履修をすることを求めた。また、下田学生寮に留学生12 人および慶應の塾生1 名が入居して生活を共にした。12 月いっぱいで慶應での学習を終え、1 月始めに全員香港大学に移動した。香港大学では、Facultyof Social Sciences 設置科目から必修のIntroduction to Hong Kong and China、 East Asia PoliticalEconomy および、選択科目を合わせて4 科目24 単位を履修することになっている。また、5 月始めに香港大学での学習期間終了後は韓国に異動し、延世大学のアレンジによるGlobal Internship で韓国でのインターンシップに参加することが決まっている。インターンシップ後は、延世大学で開講されるサマープログラムに参加し、必修のIntroduction to Korea Studies を含む2 科目6 単位を履修することが要件となっている。
以上、これまで概ね本プログラムは順調に実施されてきている。
本プログラムの実施にあたっては、慶應での受入期間に履修する科目群として、必修科目のアカデミックコーディネータの担当する法学部設置科目に加え、国際センター設置の日本・国際研究講座から約20 科目(以上、英語による開講科目)を指定して提供したほか、日本語研修課程が提供する日本語の技能科目から2 科目の履修を認めた。参加した学生の成績は概ね良好であった。これまで慶應としては実施したことのない新しいタイプの交換留学プログラムであったこと、派遣先の2 大学との学事日程が異なることもあり、次年度に向けては、以下のような課題を認識している。
1 月初旬には香港大学での新学期が始まるため、慶應で秋学期に開講している指定国際センター設置科目を一部集中的に実施することで12 月までに必要授業時間数を確保しているが、このために英語による開講科目の選択肢が限定的となっている。参加学生からは、科目数の拡充の希望が出されており、特に、より専門的なレベルの科目についても今後どのように充実させていくかが課題となっている。また、本プログラム参加学生に限定した授業科目の設置についての希望も出されている。日本語学習については、履修可能な科目数は2 科目が上限となっているが、もっと日本語を学びたいという希望もあり、改めて関係教員との調整が必要となっている。
このような課題は残されているが、最初の留学先となった慶應での在籍期間を通して、3 大学からの学生は学業や寮での生活の中で積極的に交流し、特に、この期間に受入れた2 大学の学生は日本の社会や文化についての理解を深めることができた。また、慶應の学生にとっては、この期間は留学前に英語による授業科目を履修し、留学生と共に学び、また適宜ホスト大学在籍学生としてガイド役を務めることで、香港、延世への留学準備の機会を提供することができたのではないか。しかし、学生たちが、まだ、香港に留学中という段階にあるため、プログラム全体としての成果、目的の達成度合いを評価するには、時期尚早であり、香港、韓国での留学を終えるのを待つ必要があるが、プログラムの目標とした方向に向かって成果を上げつつあると考える。
このプログラムは、日本、香港、韓国の大学に所属する学生が共に3 カ国で学ぶことを通じて、お互いの文化や社会の状況について、東アジア地域について、その共通性や差異を実体験を通じて理解する機会を提供するというユニークなものであり、将来この地域でリーダーとなる学生にとって大変意義深いプログラムであると考える。特に、この地域に対する塾生の関心は欧米地域への関心と比較すると必ずしも高いとは言えず、通常の交換留学への志望者も少ないため、大学としてあえてこのような形態の交換プログラムを実施することで、塾生が東アジアに関心を向けるきっかけを継続的に提供していきたい。