2008年度公募プログラム

「三田の家」:21世紀的学生街の創出に向けて

活動課題(テーマ)

大学を地域・社会に開く拠点=「三田の家」を、教員と学生が共同運営することにより、昨今の塾生に欠けがちな社交力(sociability)の育成を目指す。
学生/教員/職員、大学人/地域住民・商店主、日本人学生/外国人留学生、幼稚舎生/大学生、一般学部生/通信教育部生、「健常者」/「障害者」など、異文化・異世代・異組織・異領域間の横断的交流を促す多様なプロジェクトを展開する。
三田商店街と協働することにより、三田の地域特性を生かした新たな文化・学生街の創出を目指す。

 

担当

経済学部准教授 長田 進

長田 進現代は大学と地域の関係について問われる時代です。私たちの三田の家プロジェクトでは、大学と地域の関係を単なる「地域貢献」にとどめずに、ともに「地域を創る仲間」として活動することを目指します。

主な活動メンバー

文学部准教授 岡原正幸
経済学部准教授 長田 進
教養研究センター講師 坂倉杏介
経済学部教授 武山政直
国際センター教授 手塚千鶴子
法学部政治学科(2008 年9 月卒業) 渡辺久美

事務担当部門

教養研究センター

実施状況

2008 年度の活動としては、「三田の家」を運営することを通じて、地域社会に新たな文化・交流の萌芽をもたらすべく活動してきた。その活動を、さらに長期的に発展させ、21 世紀の大学にふさわしい地域社会との関係性=学生街の創出に向けて、多様な文化的・教育的プロジェクトを展開した。2008年度に関しては、以下のような活動を実施した。

(1)三田地域・商店街活性化プログラムへの参加 (それに関係した学生ワークショップの開催)

三田商店街との協力関係の下、商店街のクリスマスセールのポスター制作等を学生が行なったりすることで協力関係にあった。この時には、単に大学生がアルバイト感覚で参加する形を取るのではなく、学生のメディアリテレシー教育の一環として、各種ソフトウェアの利用法のワークショップを行なうことでの学生の技術の向上を目指す活動の一環として、ポスター制作を行うことで、教育的効果を考慮した活動となった。

(2)外国人留学生との「小さな国際交流」プログラムの実施

国際センター手塚教授の責任のもと、毎週月曜日の夜に、義塾に留学中の学生や留学を考えている学生等が集まり、お互いの文化について紹介する内容のミーティングや、留学生ならではの意見交換会が定期的に開催された。

(3)(通常の教室では行ないにくい)実験的ワークショップ、公開授業の実施

文学部岡原ゼミでは、三田の家を教室として授業(の一部)を展開し、社会学の実践の場として「三田の家」を活動した。また、氏のゼミでは、2008 年6 月に仙台にて開催された「カルチュラルタイフーン」にゼミとして参加し、学生の活発な活動の発表の場となった。

(4)大学地域連携シンポジウムの開催

2008 年12 月18 日(木)に「大学地域連携シンポジウム」を開催した。ここでは、上記の内容に加えて、「三田の家」から生まれた学生の活動などを紹介する機会を設けた。このシンポジウムを通じて、現在声高に叫ばれる「地域連携」について、「三田の家」で行なっている事例を外に向かって紹介する機会となった。

なお、商店街の街頭TV の制作については、建設工事に伴いTV の設置場所がなくなった(2008 年9 月)ため、これに関する活動の実施は不十分となったことを付け加えておく。

成果・目標達成度

プログラムの成果としては、以下の3 点について述べることにする。

(1)商店街と学生の交流について

2006 年9 月に「三田の家」を一般公開してから、地元商店街との交流が少しずつ進展している。先にあげた、商店街の行事にただ参加するだけでなく、2008 年度については、学生から活動のアイデアを商店街の理事会に提案するなど、積極的な展開をすることが出来た。実際、このような活動は商店街の方からも歓迎されたといえる。また、学生にとっても、商店街の人との交流は今まで考えていなかったが新鮮なものであったと考えているようである。
しかしながら、学生は2~3 年で義塾を卒業することになり、人が変わっていく。ここには、新しい学生を定期的にうまく参加させる仕組みを作ることが必要になると思われるが、現時点では十分に対応しているとはいえない部分があり、今後の課題として取り組んでいきたいと考えている。

(2)新しい学びの場としての活動について

キャンパスの外で各種のワークショップや授業を行なうという試みにより、キャンパス内での授業と異なる雰囲気の元で学習が展開していくことについて、学生にとって新鮮だったという報告を受けている。また、留学生同士の交流について、サイズや雰囲気が適切であり、学生間の交流が進み、お互いの文化についての意見交換が和やかな環境の元で進んでいる点で、学生にとって有益な場所になっているということが出来る。

(3)義塾と地域貢献の活動について

三田の家での活動が認められた証拠としては、義塾と港区との間で協定を結んだ結果として、「芝の家」事業が始まるきっかけを作ったということがある。この点において、2008 年度は地域貢献活動においてささやかながら、「三田の家」が良い影響を与えることが出来たと考えている。

今後の展望

本プログラムは2009年度も先導基金の支援を受けることになっている。2008年度のプログラムの成果を踏まえて、新しく以下にあげるプログラムを実行する予定である。

(1) 学生の活動を支援するプログラムの拡張

地域との交流を通じて、学生の活動を支援する試みを強化していく予定である。具体的には、学生のメディアリテレシーを向上するためのワークショップをシリーズ化して行なっていく予定としている。ここでは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションにとどまらず、イラストレーションの制作、動画の編集といった作品制作に関係したメディアリテレシーを中心として行う予定である。

(2) 地域連携の動きを活発化させるための試み

2008 年度のシンポジウムの活動を発展させて、活動の活性化を図る予定である。次回は、他の大学で行なわれている活動を連携するために準備を費やす予定である。この活動においては、学生の活動を発表する機会を多く設け、義塾の学生の意欲的な活動を世にアピールする機会となるよう考慮する。

参加者の声

公募プログラム

文学部仏文学専攻 籾山奈々子

大学のキャンパスに通っているだけでは出会うことのできない、商店街や近隣にお住まいの方々、また他学部の学生や先生方と街を活性化する企画をしたり、ワークショップに参加したりすることは、アカデミックなことだけからは学べない多くの刺激を受けることを期待して、プログラムに参加しました。結果、わたしが予想していた以上に多くの「学び」がそこにはありました。ワークショップでデザインなどの実際のスキルを学んだことはもちろん、さまざまな年代の人と交流することで、コミュニケーションのあり方を学んだり、三田や慶應の歴史の一端に触れたり、先生たちの教育に対する思いを学んだりと、学内ではなかなか得ることのできない経験をすることができたと思います。わたしは就職して社会人になりましたが、研究者にならないわたしのような人間にとって、大学でアカデミックなことだけでなく、また資格のような点数で計るようなものではなく、「三田の家」であったような、人と人との関係を構築する場で適したふるまいをするという無形のスキルと経験は、会社に入ってもどんな場所にいても、ずっと支えになると思います。


法学部政治学科 渡辺久美

それまでの大学生活では出会わなかったような人たちと接することができそうなところに魅力を感じ、参加するようになりました。
気の合う仲間と過ごすことに比べて、文化的な他者と関わっていくということは面倒くさいことも多いです。しかし、多様な職業、生き方を選択している方々と知り合えたことで、それまで当たり前に感じていたこと、当たり前と思い込もうとしていたことから解放され、ありのままの自分でいられるようになったような気がします。
また、まちの人と挨拶を交わすようになったり、自分が制作に携わったポスターを店頭で見かけたりすると、三田のまちに自分が関係していることを感じます。
通学路として通り過ぎていた頃には、チェーン店ばかりが建ち並ぶ面白味のないまちに見えていた三田ですが、まちの人の顔が見え、生活の営みが感じられるようになり、このまちがもっと魅力的になる活動をこれからも続けていきたいと思うようになりました。

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